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2019年 09月 12日 ( 1 )

韓国のこと (1)

 初出の投稿から文言を整えたり、補足を加えたりしています。これからもそのように書き続けていくことになると思います。

 ずっと韓国のことについて書こうと思いながら、なかなか書き出せないでいた。最初は「徴用工」問題について考えをまとめておきたいということだった。その後、日本側から三品目の輸出規制が発表され、さらにホワイト国除外が決定された。日本政府は「安全保障上の問題が生じたため」としたが、それではというように、韓国側は「安全保障」上の信頼関係がないとしている国とは協定を維持できないとGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄を通告した。
 河村健夫氏が「ホワイト国とGSOMIAを一括して元に戻そう」という案を韓国から持ち帰ったとき、安倍首相は「根本は徴用工問題だ」というようなことを述べたという。日本政府は貿易問題を安全保障の問題に転化したと非難したが、輸出規制・ホワイト国除外は「徴用工」問題とは関係ないという日本政府側の説明にも説得力はない。二国間の関係がここまで拗れた原因がどちらにあったかという答えは簡単ではない。
 それはともかく、GSOMA破棄の問題を今日の東アジア情勢の中に置いてみるときわめて興味深い。アメリカは日米韓体制で中国を押さえ込みたいと思っているのだろう。韓国がただちに米韓同盟の解消に向かいたいと思っているかどうかはともかく、その日米韓体制に閉じ込められることを嫌っているということは十分考えられる。2017年のTHAAD配備以来冷え込んでいる中国との関係改善は経済上でも安全保障上でも喫緊の課題だろう。地理的な距離関係からしても日本とは別個の緊張感の下にあると考えなければならない。より根本的にはアメリカの力の低下、中国の台頭という中で、韓国にとっても、日本にとっても、どのような未来図を描いていくかというところまで視野を広げてみる必要があるように思うのである。
 そして目下のところ、韓国内を揺るがし、日本のマスコミの恰好の餌食になっているのがチョ・グク氏の法務部長官(法相)任命問題である。8月9日に次期法務部長官の指名を受けてから、数々の疑惑が報道されるようになったのは8月19日頃のことである。27日には検察が動き出し、一斉家宅捜査に入ったとのニュースが流れた。朴槿恵前大統領失脚の原因となった崔順実ゲート事件に順実の娘の不正入学問題があった。チョ・グク氏の娘にも大学入試に関して不正があったという疑惑が発覚したとき、これはたいへんなスキャンダルになるぞ、と率直に思ったし、文在寅体制の足を引っ張ることになるのは避けられないだろうと考えた。
 その後、少し落ち着いてみると、法務部長官任命についてはどちらもあり得るだろうし、またどちらにしてもその後の道筋は平坦ではないだろうなと考えるようになった。果たして9月9日、チョ・グク氏は法務部長官に任命された。「チョ・グク・リスク」を抱えながらの任命に、文大統領は「権力機関の改革」は最も重要な公約であり、検察改革の仕上げを任せたいとその理由を述べた。10日、チョ・グク法務部長官はさっそく「検察改革推進支援団」の結成を指示したという。
 大統領府VS検察という対立の構図はチョ・グク氏の法務部長官任命後に報じられるようになったことである。
 最初のうちは森友・加計問題でも日本の検察はこんなふうには動かなかったな、というのが感想だった。ユン検事総長は、文在寅大統領が自ら抜擢した人物であり、朴槿恵前大統領や李明博元大統領の不正疑惑を陣頭指揮したという。座右の銘は「人に忠誠は誓わない」と聞けばひとかどの人物という印象である。
 ただそのうち時系列を追ってみると何か不自然だと感じるようになった。次期法務部長官の指名を受けたのが8月9日、様々な疑惑が報じられるようになったのが19日。それらの疑惑は10日の間ににわかに明らかになったのだろうか。野党が独自につかんでいたのか、国家情報院なり検察から情報がリークされたのか(だとすればそれ自体が犯罪行為である)、チョ・グク氏が検察改革に意欲的であるというのは分かっていたことだから、指名されるのを待つようにして、一気に表に出されたとみるのが正しいように思われるのである。狙いはもちろん法務部長官就任阻止である。
 9月6日の聴聞会終了直前、新たな疑惑としてチョ・グク氏の娘の大学院進学の際に表彰状の偽造があったとされ、チョ・グク氏の妻が本人取り調べのないまま在宅起訴された。偽造があったのは2014年のことだという。すると話題にされてきた大学入試にあたっての論文疑惑というのはいつのことだったのか。なかなか調べられなかったが2008年のことらしい。いずれにしても朴槿恵前大統領がまだまだ力を持っていた時期であり、少なくとも職権乱用とみるのには無理がある。
 私募ファンドへの投資は2017年で民情主席秘書官就任後のことである。だが、各自治体への口利きの見返りに賄賂を受け取ったというのではなく、逆に投資したのであり、圧力をかけたという証拠も出てきていない。韓国で入札制度がどうなっているのかは知らないが、共に民主党に所属する自治体の首長が同じ買うならゆかりのある会社からというのが犯罪にあたるものなのかどうか。清廉潔白というのはともかく、横領罪というのにはどこか違和感がある。
 (この件に関しての日本での報道のされ方にもずいぶん問題を感じている。記者会見でも聴聞会でもチョ・グク氏は「知らない。関与していない。」としか答えなかったとされているが、時折そうではない説明がなされたことがうかがえる映像があったりした。)
  ※
 チョ・グク疑惑が今後どのように展開していくのか、文大統領にとって検察改革は師であった盧武鉉元大統領が自殺に追い込まれて以来の懸案であったといわれるが、それが単に個人的な感情の問題ではなく、韓国にとって真に必要とされるものなのか、そしてその成否が明らかになるには半年から2年の月日が必要だろう。
 GSOMIA破棄が東アジア情勢に変化をもたらしていく契機となるのか、それとも本年11月までの間に何らかのきっかけで復元してしまうのか、後者だとすれば今年中、そうでなければ5~10年を待たなければならないだろう。
 韓国では本当に差し押さえた三菱重工の資産の売却に移るのだろうか。これも今年中が最初の山場になるだろう。
 つまり、どの問題にしても今は何も書けないというのが本当なのだが、何も決まらないうちだから書かなければならないこと、後の検証を受けなければならないことがあるように思うのだ。
 この間、興味深い論考にも接することが出来た。たぶんとぎれとぎれになってしまうと思うのだが、それらも紹介しながら書き進めてみたい。
 

[補足]
※韓国における検察の問題については金香清「韓国震撼…文在寅大統領の最側近スキャンダル「問題の本質」」現代ビジネス2019.9.9が見つかった。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67016

 保守政権による検察のコントロールは朴正煕政権時代に本格化した。中央情報局(KCIA)によって摘発された思想犯の起訴を拒否した検察官たちが、退任に追い込まれ、権力側に忠実な検察官だけが残り、出世する構造となった。法律改正によって検察に強大な権力を与え、金大中を代表とする民主化勢力をけん制し、圧力を加える役割を担ってきたとのことだ。その権力は「検察共和国」と呼ばれるほどに絶大であるという。
※徐台教編集長「コリアン・ポリティクス」9/5「韓国「最強」検察に疑念の目…チョ・グク氏騒動に潜む韓国の宿題」で下記のような法科大学院教授(匿名)のインタビューを掲載している。
「人事聴聞会前の強制捜査は前代未聞で、異例の状況であることは確かだ。検察はまた、こうした事件の場合に刑事部で捜査するのが普通だが、今回は特捜部で捜査している。特捜部とは「認知捜査」すなわち、捜査対象をみずから決めて捜査する機関だ。」

https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20190905-00141385/?fbclid=IwAR1W4wZXn85lT8RVrBkur6P_grovJKpK1c8WPGzJDdK_C419iRQfCf5y8hk 


by yassall | 2019-09-12 18:50 | 雑感 | Trackback | Comments(0)