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2019年 08月 04日 ( 2 )

「表現の不自由展」の中止について思う

 3日、愛知県内で開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(津田大介芸術監督)の実行委員会が、企画展「表現の不自由展・その後」の中止を決めたというニュースが流れた。慰安婦を表現した少女像など、各地の美術館から撤去されるなどした二十数点を展示する企画であったが、内容が発表されるや抗議の電話が殺到するなどしていたという。
 こうした内容の催しがあったとき、抗議というより脅迫に近いような圧力が加えられるような事例が横行している。昨日、このニュースを聞いたとき、これはあまりにも異常だと感じたのは、中に「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」というFAXまで届いたという説明を聞いてである。もちろん最近起こった京アニ放火・殺人事件が背景になっている。おそらくFAXの送り主は自らの脅迫に切迫感を付加しようとしてのことだろう。だが、あまりにも生々しい事件を連想させようとする精神性は何だろう。そこには降って湧いたような災難に遭われた方々の無念への同情も、遺族の悲しみへの共感も、失われた命への愛おしみも感じられないではないか。私にいわせればまさにモンスターが出現したような恐怖を感じる。
 そして今日、詳細を知ってさらに気味の悪さを感じたのは幾人かの政治家の姿勢である。大村愛知県知事については「行政がコミットしてしまうのは控えなければならない。そうでなければ芸術祭ではなくなる」、中止を決めたのは「(抗議等が)これ以上続くと安心して楽しくご覧になっていただくのが難しいと危惧」したからだという。日ごろ問題を感じないでもない大村知事ではあるが、前半はしごくまっとうである。そのまっとうな姿勢がテロまがいの脅迫に屈してしまったことは、その立場を理解できないのではないということとは別に、まるで昭和初期のテロが横行した時代の再来が予感されてならないのである。 
 驚かされたのは河村名古屋市長の発言である。どうやら河村氏は少女像の展示を表現の問題ではなく、「政治」的な行為としてとらえたらしく、「(少女像の展示は)『数十万人も強制的に収容した』という韓国側の主張を認めたことになる。日本の主張とは明らかに違う」「国などの公的資金を使った場で展示すべきではない」と大村知事に中止を求め、中止が決まった後も関係者に謝罪を求めているとのことだ。「公的資金」云々は減税を訴えている河村氏らしいといえばいえるが、これだけでもかなり大きな問題を含んでいることに気が付かないでいるのだろうか? 芸術と政治の問題、検閲の問題、「日本の主張」というが学問的研究も含めて一様にはいえないこと、公的資金による芸術活動の支援のあり方、そして何よりテロまがいの脅迫に結果として同調してしまったこと、河村氏の罪と今後に与える影響は重いといわざるを得ない。さらに菅官房長官までも今後の交付金決定について「事実関係を確認・精査して適切に対応したい」と発言したということだ。
 もっと奥深い問題としては今日の「徴用工問題」に関連する「輸出規制問題」「ホワイト国除外問題」があるのだろう。この問題についてはいずれ考えをまとめてみたいと思っている。少なくとも1965年の「請求権協定」ですべてが解決したとは私は思っていない。日本側も1965年の経済支援によって「賠償」が行われた、とは発言していない。「未払い賃金」等の「財産」については補償したとしている。朝鮮の植民地支配は「日韓併合条約」によって合法的に行われたという立場をとっている限りは当然のことである。
 「経済戦争」というような規定のされ方もしている。戦争であれば相手を「鬼畜」呼ばわりすることも始まる。ヒートアップへの動きはますます強まるだろうが、少しでも冷静でありたいと思っている。そうでなければ日本人同士の対話すら困難になり、「問答無用」の社会が到来する。

〈関連ニュース〉
http://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%e6%85%b0%e5%ae%89%e5%a9%a6%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%81%ae%e5%b0%91%e5%a5%b3%e5%83%8f%e5%b1%95%e7%a4%ba%e4%b8%ad%e6%ad%a2%e3%81%a8%e3%81%84%e3%81%86%e3%80%81%e6%96%b0%e3%81%9f%e3%81%aa%e3%80%8c8%e6%9c%88%e3%81%ae%e6%98%8f%e3%81%84%e8%a8%98%e6%86%b6%e3%80%8d/ar-AAFjcEy?ocid=LENOVODHP17#page=2

http://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e3%81%be%e3%81%95%e3%81%ab%e8%a1%a8%e7%8f%be%e3%81%ae%e4%b8%8d%e8%87%aa%e7%94%b1%e2%80%a6%e3%80%8c%e6%9a%b4%e5%8a%9b%e3%81%a7%e5%b0%81%e6%ae%ba%e3%81%99%e3%82%8b%e3%81%aa%e3%80%8d%e7%8f%be%e5%9c%b0%e3%81%a7%e6%8a%97%e8%ad%b0%e3%82%82/ar-AAFk4ir?ocid=LENOVODHP17

by yassall | 2019-08-04 17:49 | 雑感 | Trackback | Comments(0)

歴教協埼玉大会講演「学校をカエル!」内田良氏

 朝霞高校時代の同僚であるKさんからメールをもらったのは7月14日のことである。その内容は、8月3-5日の日程で歴史教育者協議会の全国大会が埼玉県草加市で開催される、第1日目は草加市文化会館大ホールで一般の市民の方も参加できる全体会を開く、記念講演は『ブラック部活』や『学校ハラスメント』の内田良さん(名古屋大学准教授)による「学校をカエル!~教育の病から脱け出すために」、その後高校生も登壇して中学校の総合学習の実践を報告してもらい、続いて会場に集まった参加者全員をグループに分け、学校を変えるために何ができるかを話し合う、ぜひ参加されたいというものだった。
 研究大会の全体会としてはかなり凝った企画のようだった。Kさんが全体会担当とある。たまには学校現場の話を聞くのもいいか、というのと、細面に金髪メガネという特異な風貌で知られる内田氏がどのような話をするのかという興味、他にも知り合いの先生に会えるかも知れないという懐かしさ半分・応援半分で出かけて行くことにした。
 会場の草加市民文化会館大ホールは東京スカイツリーライン獨協大学前(草加松原)駅から徒歩5分。バスで赤羽へ出、京浜東方線南浦和駅で武蔵野線乗り換え、さらに南越谷駅で乗り換える。約1時間20分くらいの行程だろか。東口を降りて綾瀬川を越えたすぐが会場だった。
 主催者あいさつ等の開会セレモニーのあと内田氏の講演となった。時間は48分間であるという。名古屋から来てもらったというのにずいぶん短いな、と思ったが、会場トークの合間に質問用紙に答える時間、さらに全体会最後の企画であるシンポジウムにも参加してもらうというようなことであったらしい。通常であれば講師は持ち時間が終われば引き上げてしまうものだが、研究活動に寄り添おうという姿勢がみられて好ましかった。
 講演の内容も聴衆を引きつけるものだった。著作名は『ブラック部活』とか『学校ハラスメント』などセンセーショナルなイメージがあるが、自分の目標は「リスク低減」、「持続可能」であるとし、生徒の側にも教師の側にも目配りをし、データに基づいた問題点の指摘や解決策の提案は説得力に富むものだと思った。
 部活動で起こる事故の中で際立っている種目は柔道である。そこまではデータを示されなくてもそうかも知れないという予想は誰にでもつく。さらに細かく分析をすすめると5月から8月までの期間に集中していることがわかる。すると事故は柔道という種目と結びついているというより、新たに入部してきた生徒のうちの未経験者がまだ身体が十分に出来ていなかったり、しっかり受身が身についていないうちに大会向けの練習をさせていたことに主因があることが分かる。実際、その指摘を受けて柔道における事故は減っているのだそうだ。
 学校を変えていくにはまず周囲の人と話合うことから始まる、ただしそれなりの戦略を持つ必要があるという。その話し合いを可能にする同僚性が難しくなっているんだよなあ、ともう少し話を聞いてみたいところで講演は終わった。休憩時間に入ったのでこの後どうしようかと考えていたら志木高校時代のKG氏と会い、進行予定を聞き、もう少しいることにした。実践報告といっても社会科は専門外だしなあと思ったが、生徒を主体にした発表形式は成功していたし、ただ一方的な聴衆になりがちな全体会参加者にトークタイムを設けることによって双方向性を確保しようとするなどに工夫を感じた。
 私は教科も違うし現役でもないからとトークには参加しなかったが、後ろの方のグループの話し合いを聞いていたら、「憲法を変えるべきか」というテーマで議論をさせたところ、「現憲法の9条は日本を弱体化させるために連合軍が押しつけた憲法なのだから変えなくてはならない」というような発言をする生徒がいて、それほど深く考えたことのない生徒は「なるほどそうだったのか」と同調してしまう傾向があるのだという。そこで「こんな考え方もあるんじゃないか?」と教師がアドバイスすると、「先生は遊動しようとしている」と拒否されてしまうのだそうだ。「押しつけ」の問題もだが、それでは「軍備」を持ち、「交戦権」を持つべきなのか、していい戦争として悪い戦争があるのか、といったところまで深めて欲しいと思っても、一つの「強い」意見、実はそうだったのかという「事実」(?)が強い影響力を持ち、大勢を支配してしまうというのは現代社会全体にもみられる傾向である。その大勢に入らない意見の持ち主は排除されてしまうということになったら危険この上もない。
 なお、開会式では韓国の「全国歴史教育の会」の事務局長も登壇してあいさつしていた。大会日程では「日韓交流」の分科会ももうけられているようだ。今日に情勢下でこのような日韓交流が行われているのは心強いと思った。(その日韓問題ではなはだ気持ちの悪い事件が起こった。そのことは別項で触れる。)
by yassall | 2019-08-04 16:18 | 日誌 | Trackback | Comments(0)