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2013年 08月 29日 ( 1 )

北園克衛「夜の要素」

 詩を意識して読みはじめた最初の一撃となったのは萩原朔太郎であった。こんなことが書けるのか、という表現の可能性に対する驚きであったように思う。もしかすると北園克衛はそれに続いていたかも知れない。今度は、こんな書き方ができるのか、という驚きとして。
 今、書き方といういいかたをしたが、野村喜和夫の『現代詩作マニュアル』(思潮社)を読み返していたら、詩学キーワードの章で、エクリチュールについて次のような説明がなされていた。この詩人の作品の解説にそのままなり得るように思われたので引用する。

 「文字が産む差異や空間化といったグラフィックな物質性」

 昭和初期のモダニズム詩はまさにエクリチュールの変革の運動ではあったが、大半は少しばかりオシャレなお遊戯で終わってしまったように感じられる。最初の衝撃が過ぎると、私もいつか北園克衛から離れていった。
 今回とりあげる「夜の要素」は1951年刊行の詩集『黒い火』に収められた。戦前から変わらないスタイルで書き続けられていることにある感慨を持つと共に、戦後的な色彩も感じ取れる。
 言葉によって造形された彫刻(物質)のようでもあり、行から行への飛躍(差異)の産む意外性というところであろうが、成功した例ではないだろうか。

 「夜の要素」


その絶望



把手


のある

の胸
あるひは穴
のある

の腕

偶像


にささへられ
た孤独
の口



(中略)

その
暗黒

幻影





その
幻影



陶酔

黒い砂
あるひは
その
黒い陶酔

骨の把手

(きたぞのかつえ、1902-1978)
by yassall | 2013-08-29 13:10 | 詩・詩人 | Trackback | Comments(0)