大法院判決以降、韓国に対する非難として次のようなことが盛んに言われる。1965年の請求権協定で受け取ることになった5億ドルのうち、無償3億ドルは元「徴用工」らに対する補償も含まれていた。それなのに韓国はすべて経済復興に充ててしまった。(なのに今になって補償金を請求するのはけしからん。) 1. 基本的事実関係のオ.請求権協定締結による両国の措置 カ.大韓民国の追加措置 上記から、実際の支給は1974年の請求権補償法の制定以降であり、当初、対象者は被徴用死亡者に限定されるという不十分なものであったが、1977年までに83、519件に対して 91億 8769万3000ウォンの補償金が支給されている。それは無償3億ドルの約9.7%にあたる。約10%という割合の評価はともかく、すべてを経済インフラに流用してしまったという非難はあたらない。 これらの「慰労金」「支援金」が韓国政府によって支払われたということは、韓国政府が無償3億ドルの中に強制動員犠牲者(元「徴用工」)に対する補償が含まれていたこと、追加的な措置についても韓国政府が責任を負うという認識であったことを示しているといってよいだろう。 〇韓日交渉当時、韓国政府は日本政府が強制動員の法的賠償、補償を認定しなかったことにより、『苦痛を受けた歴史的被害事実』に基づき政治的補償を求め、このような要求が両国間無償資金算定に反映されたと見なければならない。 日韓条約締結にいたる日韓会談で、韓国政府は「『苦痛を受けた歴史的被害事実』に基づき政治的補償」を求めたが、日本政府は「法的賠償、補償」を認定しなかったというのは、具体的には1960-1年の第5次日韓会談をみていかなくてはならない。韓国側は「強制徴用で被害を受けた個人に対する補償」を要求したのに対し、日本側は具体的な徴用・徴兵の人数や証拠資料を要求したり、国交の回復後に個別的に解決する方法を提示するなど、要求にそのまま応じることができないという立場を表明した。会談は1961年5月16日の.軍事クーデターによって協議が中断され、実質的な妥協を行うことはできなかった。 日韓請求権協定によって元「徴用工」被害者個人の請求権は消滅したとの見解に変化が生じてきたのは、日本政府が外交保護権放棄説に立っていることが知られるようになって来たことによる。既出の柳井答弁が1991年、元徴用工4人が大阪地裁に新日鉄住金に対する訴訟を起こしたのが1997年である。2000年には、請求権協定で放棄されたのは外交保護権であり、個人の請求権は消滅していないとの趣旨の外交通商部長官答弁が行われた。韓国政府の公式見解となったわけである。 さらに2005年、日韓請求権協定と関連した一部文書が公開され、その後構成された「韓日会談文書公開後続対策関連民官共同委員会」(「民官共同委員会」)は、「請求権協定は日本の植民支配賠償を請求するための交渉ではなく、サンフランシスコ条約第4条に基づき韓日両国間の財政的・民事的債権・債務関係を解決するためのものであり、日本軍慰安婦問題等、日本政府と軍隊等日本国家権力が関与した反人道的不法行為に対しては、請求権協定で解決されたものとみることはできず、日本政府の法的責任が残っており、サハリン同胞問題と原爆被害者問題も請求権協定の対象に含まれなかった」とした。 要約すると、外交的保護権に対する「個人請求権」と「反人道的不法行為」に対する「損害賠償請求権」の有無と正当性が問題の焦点となる。
by yassall
| 2019-09-22 01:00
| 雑感
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