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自己責任論の2004年と2018年

週刊誌『文春』は保守系のイメージが強い。月刊誌『文藝春秋』も同様だが、どちらかというと同じ保守でも本流との矜恃が感じられるような気がする。ネット配信されている「文春オンライン」はときどき同じ文春?というような記事が掲載されるときがある。「14年前、誰が「自己責任論」を言い始めたのか?」で高遠菜穂子さんら3人が人質にされた2004年当時と、安田さんが解放された2018年の「自己責任論」の扱われ方についてまとめた記事があった。資料的にも価値があると思ったので、閣僚たちの発言や各紙の社説だけ抜き書きしておく。比較してみると2018年は新聞各紙は冷静であったようだが、その分、SNSで「自己責任論」が喧伝されていたと記者は伝えている。

文春オンライン
14年前、誰が「自己責任論」を言い始めたのか?――2018下半期BEST5
「イラク3邦人人質」記事を読み直す
プチ鹿島
bunshun.jp/articles/-/9514

2004年4月9日 『危険地域、自己責任も 小池環境相』(読売新聞 夕刊)
「小池環境相は「(三人は)無謀ではないか。一般的に危ないと言われている所にあえて行くのは自分自身の責任の部分が多い」と指摘した。」

2004年4月16日 『3邦人 あすにも帰国』「閣僚から苦言続々」(読売新聞・夕刊)
「自己責任という言葉はきついかも知れないが、そういうことも考えて行動しないといけない。」(河村建夫文部科学相)
「どうぞご自由に行ってください。しかし万が一の時には自分で責任を負ってくださいということだ」(中川昭一経済産業相)
※このほか《「損害賠償を三人に求めるくらいのことがあっていい」との声も》という記載もあった。

2004年4月17日 「『身勝手』か『不屈の志か』」(毎日新聞)
「帰国して、頭を冷やしてよく考えて判断されることだと思います」(福田康夫官房長官)
「自己責任をはっきり打ち出してもらいたい。なぜ(3人の出国のために)チャーター機を出したのか。1人は『イラクに残りたい』と言っている。こういう認識には問題がある」(山東昭子元科学技術庁長官)
「救出に大変なカネがかかったが、誰も把握していない。7日間徹夜の努力をしており、(額を)国民の前に明らかにすべきだ」(公明党・冬柴鉄三幹事長)
 ※解放直後の4月16日の政治家の発言として。
(同じ4月16日、井上喜一防災担当相は《家族はまず「迷惑をかけて申し訳なかった」と言うべきで、自衛隊撤退が先に来るのはどうか》と発言している(朝日新聞 2004/4/20)。)

 一方で野党の政治家の声も載っている。
「将来にわたってイラク(復興)にかかわりたいという気持ちは大事だ。厳しい状況に置かれながら志を曲げないことにむしろ敬意を表したい。その志に対する批判なら、まったくの筋違いだ」(民主党・岡田克也幹事長)
「金銭的負担を被害者に求めるのは一番弱い立場の人に『自己責任』を押しつけるものだ。政府の言うことを聞かない人は法律で規制するというのは、個人の尊厳や自由を定めた憲法の精神と反する」(社民党・阿部知子政審会長)

2004年4月16日 『3人、18日にも帰国』「イラク人を嫌いになれない 高遠さん『活動続ける』」(毎日新聞・夕刊) 
「いかに善意でもこれだけの目に遭って、これだけ多くの政府の人が救出に努力してくれたのに、なおそういうことを言うのか。自覚を持っていただきたい」(小泉純一郎首相)

◎読売新聞・社説
《自己責任の自覚を欠いた、無謀かつ無責任な行動が、政府や関係機関などに、大きな無用の負担をかけている。深刻に反省すべき問題である》(2004年4月13日)
《政府・与党内には、救出費用の一部の負担を本人に求めるべきだという議論もある。これは検討に値する。独善的なボランティアなどの無謀な行動に対する抑止効果はあるかもしれない》(2004年4月19日)
◎読売新聞『編集手帳』
《人質にされた三人は政府の「退避勧告」を無視してイラクに出かけている。悪いのは一にも二にも卑劣な犯罪者だが、世に与えた迷惑の数々を見つめればきっと、三人もひとつ利口になるに違いない。》(2004年4月16日)

2004年4月16日 『自己責任問う声次々 政府・与党「費用の公開を」』(朝日新聞・夕刊)
《安倍幹事長は「山の遭難では救助費用は遭難者・家族に請求することもあるとの意見もあった」と指摘した》

2004年4月20日 『米国務長官は「『誇りにして」』(朝日新聞)
《パウエル米国務長官は15日、一部メディアとのインタビューで、イラクで人質になった市民の自己責任を問う声があることについて「誰も危険を冒さなければ私たちは前進しない」と強調。「より良い目的のため、みずから危険を冒した日本人たちがいたことを私はうれしく思う」と述べた》
《「日本では、人質になった人は自分の行動に責任を持つべきだと言う人がいるが」と聞かれたパウエル長官は、これに反論して「彼らや、危険を承知でイラクに派遣された兵士がいることを、日本の人々は誇りに思うべきだ」と語った》
 ※パウエル氏の言葉は4日後の記事でも補完されている。
「私たちは『あなたは危険を冒した、あなたのせいだ』とは言えない。彼らを安全に取り戻すためにできる、あらゆることをする義務がある」

2018年10月28日『「自己責任」独り歩き懸念 ネットで安田さんへ批判次々 経済用語使い方すり替え』(毎日新聞 10月28日)
《「<自己責任>とは何か」の著書がある桜井哲夫・東京経済大名誉教授(社会学)によると、1980年代後半のバブル経済時代の規制緩和の中で、リスクのある金融商品に投資する消費者に対し「自己責任が求められる」といった使われ方をした言葉だという》
《「日本で『自己責任』というと、約束とは関係なく一方的に弱者が責任を負わされたり、怒られたりするようになった」と指摘する。/その上で「経済用語にとどまっていたものが、04年の人質事件で社会的・政治的な言葉へとすり替えられ、政治家らの論理で弱い立場の人を批判することに使われた。14年たった今の社会はさらに疲弊し、弱者をたたく傾向が強まっている。ソーシャルメディアで簡単に発信できることが拍車をかけているように思われる」と懸念する》

2018年10月25日『【主張】安田さん解放 テロに屈してはならない』(産経新聞)
《危険を承知で現地に足を踏み入れたのだから自己責任であるとし、救出の必要性に疑問をはさむのは誤りである。理由の如何を問わず、国は自国民の安全や保護に責任を持つ》


by yassall | 2019-01-13 20:45 | 雑感 | Comments(0)
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