8日、みかわやこと葉山美侑から出演情報があり、新宿・眼科画廊まで出かけてきた。
かなりセンセーショナルな題名だが、事前の案内メールによれば「タイトルのインパクトが強いですが、前回の公演ほど際どい演出はありません」とのことであった。前回というのは5月の『陳弁ピクトグラム』のことを指しているのだろう。であるなら何の心配もいらない。 実際、「これはセックスというよりジェンダーの世界だな」というのが、見終わってからの感想である。チラシには「少し歪んだメガネ越しに眺めた、なんとなく生きづらい人たちのおとぎ話」というようなリードがあり、劇団の紹介には「女系家族で女子校育ちの美貴ヲがセルフプロデュースする演劇ユニット」とある。(netで検索してみると、2014年より始動とあった。) そうなると男性であることから1mmも外れない身としては、うかつに「共感した」とか「理解できた」とかは口に出来ない。先年亡くなった雨宮まみの『女子をこじらせて』あたりを手がかりに、おそるおそる解剖していくしかない。 構成は小話を重ねていくオムニバスになっていて、毎日が同じように繰り返される日常の中で次第に自己をすり減らしていくOLや、「30歳までに結婚しないと動物にさせられてしまう」ため、収容所の中で期限付きの婚活を強いられる女性たちが、あるいは狂気にさらされ、あるいは脱走を企て、自己を突き放してみたり、抱え込んでは悶え苦しんだりする。各小話は必ずしも関連づけられているわけではないが、どこまでが遠い(それゆえに歪んでしまった)記憶であるのか、妄想(入口も出口も閉ざされてしまった)であるのかも分明しがたい姉妹をめぐるエピソードなどには、それこそ底なしのところがあって慄然とさせられたし、6話の中では一番オリジナリティを感じた。 件の「生産性」発言もさっそく取り入れられているが、表面的な社会批評に終わらず、深いところで傷つきつつ、笑い飛ばしてしまうしたたかさを感じたりもした。 自己言及性というのか、再帰性というのか、作り出した物語をあとに続く物語が飲み込んでいってしまう作りになっていて、アンダーグランドの本領発揮というところだ。それでも、どこかに系統が存在するはずだと思うのだが、一度見たきりでは入口すら見つからない。 というわけで、あまり勘の良い観客ではなかったが、今度、脚本を見せてもらう機会があったらと思った。笑って終わって、でもいいのかも知れないが、隠された表現の切実さは伝わったような気がするのである。 さて、みかわやは新たなステージを模索中なのだなと思った。これからどこへ向かっていくのだろうと、会って話でもしたいものだと思った。 と、そのみかわやと同学年だったナベナベと会場で一緒になった。昨年、第一子を出産。子育ての真っ最中だが、今日は子どもは旦那に任せ、これからエビラーメンを食べて帰るつもりだという。エビラーメンという名前につられて、というのはもちろん冗談で、久しぶりに話でもしようとついていくことにした。この日に見た劇に影響されたのか、せっかくの育児の小休止に私が割り込んでよかったのか、後から少し反省した。
by yassall
| 2018-09-10 17:54
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