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2017年埼玉高校演劇中央発表会

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 11月18・19日、埼玉県高等学校演劇中央発表会が開催された。今年も写真記録の係を依頼された。今年はメインのIさんがフルタイムでいられるというので、半ば趣味の延長という気楽さで引き受けた。何にしても2人というのは何かのときにはカバーし合えるという点で心強い。Iさんもそう思ってくれたならうれしいことだ。
 趣味の延長というのは、具体的には新しい機材を試してみたかったということである。D750はフルサイズであることに加えてハイライト測光という測光方式が選択できる。AFも-3レベルの暗所に対応し、f8のレンズでも合焦可能なフォーカスポイントを備えている。購入の動機は35mmフイルム時代のレンズが使えるというのが最大の決め手であったが、舞台撮影に威力を発揮するかもというのも大きな要因であった。
 スポットライトに照らされた人物を撮るとき、もっとも懸念されるのは白飛びである。その点、ハイライト測光は確かに効果があると感じた。マイナス側よりプラス側に露出補正が必要なケースが多かったほどである。ただ、ミラーレスの場合は撮影前にモニターで補正の適不適をある程度まで確認することが可能だが、一眼レフの場合は勘に頼りながら、また撮影後の画像を確認しながら値を決めていかなくてはならない。どうしても試し撮りの枚数が増える。
 ファイルをパソコンに落とし、一度だけ画像チェックをした段階だからまだ何ともいえないが、ピントについてはm4/3のG8と比較して飛躍的に向上しているかどうかは微妙である。舞台の場合、サスにしろシーリングにしろ、トップからの光が多い。そのためか、どうしても顔や首回りに影が出てしまう。それを避けるためには露出を開けることになるから今度はまた白飛びが心配になる。最終的には枚数をかせいでおくしかなさそうだが、いずれにしてももっと使い込んでおくことが大事だろう。重たいカメラだから三脚の使い方あるいは選択も考え直さなくてはならないかも知れない。
   ※
 さて、カメラの話になると際限もなくなってしまうが、審査の結果は下記のようであった。

 最優秀賞   越谷南高校「宵待草」
 優秀賞一席  秩父農工科学高校「Solid Black Marigold」    (以上は関東大会に推薦)
 優秀賞二席  芸術総合高校「朝がある」
 創作脚本賞  越谷南高校「宵待草」斑鳩里志・作

 最優秀賞・優秀賞一席とも顧問創作である。今年は秩父農工科学高校の芝居に注目させられた。高校生が生徒会室に集まってきては生徒会活動にあたったり、文化祭準備のためにマリーゴールドの造花を作ったりしている。生徒会室を取り囲んでいるのは鉄筋がむき出しになったコンクリート建築の廃墟のようである。そこへ転入生がやってくるのだが、その転入生は生徒会メンバーの多くが卒業した小学校で、かつて皆がイジメの対象にした生徒だった、というのが物語の発端である。
 イジメを取り上げているとはいえ、その場でイジメが展開されるのではなく、過去のイジメや知らんぷりを反省して謝罪し合っていくという逆ベクトルになっている。暴力の連鎖をさかのぼっていくと「見ていたのに助けようとしなかった」から「知ろうとしなかった」ことの罪悪にまでたどりつく。
 「サイコパス」の問題が出てくるところが少しわかりにくかったが、「共感」の欠如というあたりが焦点になるのだろうか? そのあたりまで突き詰めたところで、一転してテロの問題が提起される。ここで舞台装置としての廃墟の意味も明らかにされる。具体的にはシリア空爆の光景である。カナトの妄想癖というのは言葉を変えれば想像力であるのだろう。カナトは想像力で世界とつながったのである。
 マリーゴールドの花言葉は「友愛」と「絶望」なのだそうである。ラストは爆撃機の飛来音らしき音響でしめくくりとなるが、「絶望」的な状況ばかりが提示されたのだとは思われない。「絶望」に突き当たったあと、なお「友愛」の道の探求を伝えようとしたドラマであるとみた。「絶望」の底まで落ち込むことで、はじめて「希望」を切実に希求することがあるように。
 今年夏の宮城大会を振り返った小池さんの文章に、「誰も掴みだしていないようなココロノカケラ」を舞台化していきたい、というような一節があった。昨年の芝居で秩父農工がめざしたものが何であったか少しばかり理解できたような気がしたが、私としては今年の方が作品として優れていると思われた。直前でひねりの入る変化球ではなく、ストレートにメッセージが伝わってきたように思えた。
  ※
 越谷南高校の芝居は審査結果の発表の以前から周囲の人たちの間で評価が高かった。ただ、どうしてか私は芝居に入っていけなかった。理由としては幕開け早々にちょっとした撮影上のトラブルがあったことがあげられるかも知れない。ツカミのところをツカミ損なってしまった。
 だが、そればかりではないように思う。様々な人間模様が延々と繰り広げられていくのだが、いったい何を伝えようとし、どこへ向かって時間が進行しているのか、そのかけらさえも心に引っかかってこないのだ。
 大正という時代の雰囲気を表現してみたかった、というならそれでもいい。激動の昭和の前夜、日本の近代史の中でも特異な位置を占める大正に心引かれる気持ちも理解できないわけではない。だが、もともと「大正浪漫」などというのはあまり信用していないが、どこか頽廃的なまでの爛熟を表現するには役者があまりに若すぎる。フリーラブを唱えながら先へ進もうとするとたちまち封建的な家制度の壁に突き当たらざるを得なかった挫折が表現されているか、といえばそれは無理だっただろう。やがて日本を飛び出していった東郷青児、アナキスト大杉栄らが人物群像として配され、豆腐屋に「シベリヤ出兵以来、どうにも不景気で」というような台詞をしゃべらせることでもう一つの大正史が描かれそうにもなったが、芝居を立体的にするまでには至らなかったように思う。
 以上のようなものいいになってしまうのは目下のところ私が次のような「大正」観に大きく影響されているからかも知れない。実際、急速な資本主義の発達の中で労働問題は深刻化していったし、昭和の戦争の時代に兵士として動員されていった圧倒的多数は大正生まれであったのだろう。「大正浪漫」「大正デモクラシー」は歴史の一面でしかない。

「大正の文化を支配した普遍主義が、西洋市民社会の日本社会への内面化であるという幻想を知識階級に抱かせたときから、明治近代国家が帝国主義国家に変質し、まずアジアの中で急速に孤立の度を深めていったのは、皮肉な運命といわねばならない。」(桶谷秀昭『夏目漱石論』)
  ※
 新座柳瀬高校の「Lonely My Sweet Rose」は選外となってしまったが、深い井戸から水を汲み上げてくるような、あの切ないまでのリリシズムは確かに会場に伝わったと思う。
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 所沢北高校の「のぞく・はいる・ほる」には、実は心配と期待とが相半ばしていた。心配というのは地区発表会で私たちが目の当たりにした通りの芝居が中央発表会で再現できるだろうかだった。(さらなるレベルアップを目標にしてもらいたかったのはもちろんだが。)どうしても守りに入ってしまうことで、台詞のやりとりでは微妙に間の狂いがあったとは思う。衣装を夏物から秋物(一部不統一)に変えてしまったから、何となく軽快さが失われてしまった(あわせてそれぞれが自分を守る鎧を持ってしまった)ようにも感じた。だが、総体としては上出来だったと思っている。
 地区発表会での劇評にも書いたが、この重いテーマを正面から受け止め、自分たちなりに脚本を読み込み、理解しようとし、舞台化しようとしていた。頭だけ(?)で演技しようとしているというような言われ方をするかも知れないが、それを言ったら頭を使わずに演技しようとしていた学校が他にあったのかと問いたいし、舞台化といったとき、彼らが身体表現の重要性に気づかず、おろそかにしていたとは思えないのである。(Eが声を張りすぎてしまったために怒りの中にある嘆きを表現しきれなかったというようなことは確かにある。頭ではEの心情を理解できていても、心が作れていなかったということかも知れない。それでもこの台本にとりくんだ意気込みは評価してやってよいと思うのである。)
  ※
 こうして振り返ってみると、確かに私の芝居の見方はメッセージ性に偏重しているのかも知れない。(本当は耽美的な世界も好きだし、不条理や怪奇、純粋なアクションやコメディに対する評価がないわけではないのだが。ただ、それらを見せてくれるとしたらプロでしかないだろう。)その意味では私は観劇者としては初歩の初歩なのだと思う。だが、大多数の観客はその芝居が何を自分に伝えてくれるのか、どのように自分を変えてくれるのかを待っているのではないだろうか? であるなら私は玄人であろうとは思わない。





by yassall | 2017-11-21 01:32 | 高校演劇 | Trackback | Comments(2)
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Commented by at 2017-11-23 07:45 x
ご観劇&舞台写真、ありがとうございました。
また、頑張ります。

お願いしたいことがあるので近々、ご連絡させて頂きます。
Commented by yassall at 2017-11-23 13:18
お疲れ様でした。選ばれなかったのは残念でしたが、2度見られてよかったと思っています。写真撮影の方は思うような結果が出せませんでした。以前のと比較してどうだったか、今度にでも率直に聞かせて下さい。
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