会場はいつもの蕨市の加藤邸ではなく、BUºY北千住アートセンターとある。どんな所かとチラシを読むと、「2階は元ボーリング場、地下は元銭湯というユニークな廃墟を改装」した文化複合施設とある。地図をたよりに千代田線北千住駅から歩いてみると、外観こそそれほど荒れた様子もない古ビルであったが、案内された地下の空間はまさしく「廃墟」であった。(今年の7月オープンとあったが、後から聞くと整備はこれから、とのことだった。だが、どのように整備がすすむのか疑わしい限りだった。) もちろん冷房設備などはなく、工事現場用の扇風機が回っているだけだ。きつい残暑の中、とうてい快適とはいえない環境である。しかし、しばらく時間が経過すると、不思議な非日常性が顕在化してくる。わずか1階分の階段を降りただけのこの空間は、地上の世界から切り離された迷宮なのだと思えて来る。 特に客席などは用意されていない。衣装をまとっているから役者と一般客との区別はつくが、例によって観客を巻き込みながら劇空間を作り出していこうという作戦らしい。 そういうわけだから、1時間半に仕立て上げたこの芝居をみていても、それがいったいいかなる場面であるのか、その場面を切り取ってきた表現意図が何であるのか、理解できていたとはとうてい言えない。このへんは正直に告白しておいた方がいいだろう。 それでも芝居は面白かった、と言おう。小田島雄志の訳を使ったとあるからシェークピア劇としては比較的新しい訳なのだろうが、それでも古典劇特有の格調高い科白を、どの役者もみごとにこなしていたし、それでいて演技は様式化することなく、躍動的で生身の身体の存在を感じさせた。河原、崎田のゲッコーパレード立ち上げからの2人が冴えていたし、新たに加わった俳優たち、今回は特に男優たちの力強い演技が印象深かった。 中世から近世へ、さらには近代へと移行する時代の激動期に、ゆさぶられ、身もだえし、翻弄される人間たちの苦悩がテーマなのだろうか? 王たちの、貴族たちの、そして民衆の。 内乱の中で親子が敵味方に分かれ、それと知らずにわが子、あるいは自分の父親を手にかけてしまった兵たちの嘆き、「私の涙でお前の傷口が洗われるまで私は涙を流し続けよう」(やや引用は不正確)という場面で、芝居を変調させ、感情表現を抑えた、フラットな科白回しとした演出も効果的だと思った。 ゲッコーパレード次回公演は以下のとおりであるという。また目が離せない。 ゲッコーパレード出張公演(仮) 演目 「リンドバークたちの飛行」 原作・ベルトルト・ブレヒト 訳・岩淵達治 期日 2017年10月12日(木)-17日(火) 会場 登録文化財 島薗邸 (文京区千駄木3丁目3-3) メール geckoparede@gmail.com ウェブ http://geckoparede.com twitter @geckoparede
by yassall
| 2017-08-27 01:58
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