審査員なんてガラじゃないのは重々承知しているので、高演連の事務局長には「どうしても調整がつかないときの最後の候補なら」と伝えてある。その約束は守ってくれているらしく、8月も中旬にさしかかったころメールがあった。日程にも不都合が無く、2年ぶりということもあり、こんなことがないと高校現場の人と交流する機会もないのでお引き受けした。相方のTさんは超ベテランの方なので(同じ年だということが今回分かったが)心強い。 地区発表会の段階だと、芝居づくりの伝統が根付いている学校もそうでない学校も、指導のノウハウを持っている顧問がいる学校もそうでない学校も混在している。それでも同じ高校生、脚本を探し、キャスト・スタッフを決め、稽古を重ね、舞台に挑戦してくるという点では対等である。緞帳が上がる瞬間、舞台の上でも、照明・音効のオペ室でも、きっと皆ワクワク、ドキドキしているのだろうと思うと、それがいとおしい。 芝居は科白で成り立っている。自分の科白を言うだけで一杯一杯になっている生徒もいる。相手の科白を聞いているようで、実は自分の科白の順番を待っているだけ。頭で理解し、何とか感情のこもった科白を言うことができる段階まで来た生徒がいる。でも、会話しているようにみえて互いに科白をぶつけ合っているだけ。頭で理解している段階だから、何とか演技らしくみせようと身振り手振りを工夫しても説明的になってしまう。 そんなふうにみてくると、実は科白は頭ではなく、身体から発せられるものだと言うことが分かってくる。「身体がウソをついている(つかせるな)」(※)というやつだが、これは難しい。生身の人間だって、言葉と身体がバラバラなことは往々にしてある。人間、日常不断に、毎日毎日を真剣に生き切っているわけではないのだ。でも、だからこそ、たまさかにも、舞台の上で科白のやりとりが生き生きとなされているのを目の当たりにすると、なにやら魂のようなものが降りて来たような思いにさせられるのである。そこまで到達できた学校、一瞬でも近づけた学校があれば思わず拍手を送ってしまう。 棒立ちということばがある。科白を覚えたてのうちは、どんな生徒だって棒立ちだ。誰もが通ってきた道だということが長年生徒たちといっしょに芝居づくりをしてきた身ならわかる。「棒」のようにコチコチに固まった心を解放させることの大切さ、科白と身体との一致をめざすことの大切さ、そんなことを伝えられたら3日間所沢まで通った甲斐があるというもである。 ※各学校には顧問の先生がついている。同じようなことであっても、立場の異なる人間からいわれると伝わり方も違うだろうと、講評では「臆面も無く」を心がけている。 ※芝居づくりは脚本選びから、というのもここにある。台本に「ウソ」があれば、科白が生きてくるはずがない。
by yassall
| 2016-09-12 20:48
| 高校演劇
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Comments(2)
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by
kawagoenishi at 2016-09-16 06:12
具体的な劇評は、ないのですか?
だとしたら、残念。
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by
yassall at 2016-09-16 07:45
比企地区が残っているからという理由もありますが、講評は聞いていてくれていると思うので、審査で伺った地区の劇評はこれまでもアップしていません。でも、少し考えてみます。
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