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プラウダを持つ蔵原惟人

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 開催が明日までという日、板橋区立美術館へ出かけて来た。駆け込みである。展覧会名は「絵画・時代の窓1920s→1950s」、板橋・池袋モンパルナスに関連した作家たちの前衛的な作品を収集してきた館蔵品展である。
 新聞で紹介されたとき、標題の「プラウダを持つ蔵原惟人」が展示されているのを知り、ぜひ見たいと思った。これが目当てで出かけたようなものであり、他にも何作かは気をひかれる作品はあったが、ねらいは間違っていないと思った。
 蔵原惟人は長く日本のプロレタリア文学の理論的支柱であった。プロレタリア文学というと、革命のための文学=プロパガンダという印象がどうしてもぬぐえない。だが、この絵に描かれた若き蔵原惟人はソ連留学を終えて帰国したばかりという初々しさを漂わせている。
 着衣の青いルパシカはモデルをつとめるに当たってのリクエストであったという。その質感のみごとさもさりながら、すっきりとした顔だちは少しも野心的なところがなく、気高さのようなものが感じられる。
 画家の永田一侑は芸大卒業後の1927年に労農芸術同盟に加盟、その後前衛芸術家同盟の結成にかかわっている。この絵が描かれたのは1928年、第1回プロレタリア芸術展に出品された。
 新しい芸術を創造したいとする若き才能の出会いであったのだろう。やがて二人とも特高警察の監視下におかれ、何度も勾留されることになる。それでも絆は固く、二人の交際は戦後も続いたとのことだ。
 蔵原惟人からはとうに卒業した気になっていた私は、これまで知らなかった、しかしこれこそが真実の姿であったかも知れない蔵原惟人と出会ったような思いから、作品の前からしばし立ち去りがたかったのであった。
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by yassall | 2016-06-19 00:12 | 日誌 | Comments(0)
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