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鳥居「キリンの子」

目を伏せて空へのびゆくキリンの子 月の光はかあさんのいろ
墓参り供えるものがないからとあなたが好きな黄色を着て行く
花柄の籐籠いっぱい詰められたカラフルな薬飲みほした母
あおぞらが、妙に乾いて、紫陽花が、あざやか なんで死んだの

揃えられ主人の帰り待っている飛び降りたこと知らぬ革靴
刃は肉を切るものだった肌色の足に刺さった刺身包丁

全裸にて踊れと囃す先輩に囲まれながら遠く窓見る
先生に蹴り飛ばされて伏す床にトイレスリッパ散らばっていく
心とはどこにあるかも知らぬまま名前をもらう「心的外傷」
音もなく涙を流す我がいて授業は進む 次は25ページ

祖母のこと語らぬ母が一人ずつ雛人形を飾る昼すぎ
路線図のいつか滅びる町の名へ漂白剤のように雪降る
もう誰も知らない母の少女期をみどりの蚊帳で包めり昭和

 鳥居のことを知ったのは昨年の東京新聞で連載された「鳥居 セーラー服の歌人」によってである。連載の署名は文化部・岩岡千景となっていた。記事中で紹介された短歌に引き込まれ、あわてて切り抜きを始めた。21回まで続いたが、連載そのものも力作だと思った。
 鳥居は本名も年齢も明かしていないという。その生い立ちは壮絶である。両親は2歳のときに離婚、母は小学校5年の時に自殺、天涯孤独となる。児童養護施設に預けられたが、激しいいじめや虐待を受けたという。中学卒業後、16歳から働いて一人暮らしをしている。
 中学校では不登校となり、義務教育をきちんと受けていない。セーラー服を着るのは、自身の義務教育を受け直したいという意思表示と、同じようにいじめや貧困などから学校に行きたくても行けない子どもたちがいることを表現するため、としている。
 養護施設での楽しみは、部屋の片隅に置かれていた中日新聞を読むことだったという。辞書を引き引きだったというから、半ば独学でことばと漢字を覚えた。文学との出会いも朝刊の岡井隆の「けさのことば」からだったという。2012年、全国短歌大会で佳作に入選、13年掌編小説で路上文学賞、14年に中城ふみ子賞の候補作に入った。
 その後、注目を集めるところとなったが、もちろん理由は作品の力である。その生育歴が作歌の原エネルギーであるのは確かだろうが、生い立ちそのものの特異性に対する関心からではあるまい。
 これらの短歌を紡いでいくことで、この傷ついた魂は浄化されるのだろうか? はたまた、魂が浄化されたとき、作歌も止まってしまうのだろうか? それはまだ私には分からない。ただ言えることは、この短歌たちは歌人本人の心の傷を曝すにとどまらず、たとえば死んでしまった母、あるいは多くの不幸な子どもたちの魂にも寄り添おうとしていることである。
  ※
 何とか他に情報を得たいと思ったが、ネットで検索しても新聞の連載以上のことはなかなか知ることができない。ブログをはじめているのが分かったのでリンクをはり、ときどき閲覧していた。
 本が出たらすぐにでも買うのに、と思っていたら、つい最近のブログに出版情報(1冊は岩岡千景の著作)がアップされていた。
 そこで、詩・詩人シリーズとしてアップし、あわせて紹介する。(私はすぐにamazonで予約注文した。)

「キリンの子 鳥居歌集」
著者:鳥居
価格:1728円
「セーラー服の歌人 鳥居 拾った新聞で字を覚えたホームレス少女の物語」
著者:岩岡千景
価格:1404円
出版社:KADOKAWA(アスキー・メディアワークス)
発売予定日 : 2016年2月8日

※出版社、発売予定日は両書とも。



ブログ鳥居のURL
http://toriitorii.exblog.jp/

※最後までお読み下さった方へ
本が届いた後、「詩とは何か 「鳥居歌集」から」(2016.5.13)を書きました。あわせてお読みいただければ嬉しく思います。



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by yassall | 2016-01-20 15:18 | 詩・詩人 | Comments(2)
Commented by toriitorii at 2016-02-01 12:29
ありがとうございます
鳥居
Commented by yassall at 2016-02-01 17:57
こちらこそコメントありがとうございます。本が届くのが待ち遠しいです。たくさんの人に読まれるといいですね。
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