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斎藤美奈子『ニッポン沈没』筑摩書房

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 だいぶ読むスピードは遅くなったとはいえ、本は読んでいるし、まだまだ読みたい本、読まなくてはならないと思っている本もたくさんある。ただ、読みながらいろいろなことを考えてはいるのだが、なかなかまとまらない。そこで、このブログで読書報告をしようと思っても、つい滞りがちになる。自分のテーマとしていることに近ければ近いほど、その傾向は強まる。だが、この本だけは一刻でも早く紹介したいと思ったのだ。
 読後感は、縦横無尽、痛快無比! ジャンルとしては書評・時評ということになるのだろう。筑摩書房のPR誌「ちくま」に連載された「世の中ラボ」の2010年8月号から2015年6月号までを単行本にしたものだ。毎回、一つのテーマにそった3冊の本をとりあげ、内容を紹介しながら、現代社会に生起する様々な問題の焦点を明らかにし、掘り下げようとしている。
 斎藤美奈子氏は鎌田慧、山口二郎、佐藤優氏らとともに『東京新聞』の「本音のコラム」を担当している。常々その切れ味のするどさに魅せられ、本書も出版を知るや手にしたようなものだが、今このときにこそ多くの人に読まれて欲しい思ったわけなのだ。
 2010年に「ちくま」での連載が始まったのは偶然によるのだろうが、単行本への収録にあたっての、章立ての第1章は「激震前夜」である。「はじめに」では現代日本を特徴づけるキーワードはずばり「戦争、原発、経済格差」であると述べる。以下、章立ては「原発震災」、「安倍復活」、「言論沈没」とすすむ。
 したがって一冊を貫く柱として原発、領土問題、自民党「憲法草案」、慰安婦問題、特定機密保護法、集団的自衛権といった話題への言及が大部を占める。だが、それ以外にもリニア新幹線、貧困女子、「イスラム国」といった問題にもしっかり目配りしている。
 ヘイトスピーチの問題に触れて、単にヘイト・スピーチ=「憎悪表現」としてとらえたのではその本質を見失う。スピーチ=「表現の自由」などという隠れ蓑を許すことにつながってしまう。「朝鮮人帰れ」も、沖縄で「米軍は帰れ」と叫ぶのも、違いが無くなってしまうというのだ。
 師岡康子『ヘイトスピーチとは何か』岩波新書を参照しながら、「人種、民族、性などのマイノリティに対する差別に基づく攻撃を指す」ことを明らかにし、「ヘイト・スピーチそのものがすでに暴力」であり、放置すれば「虐殺」に発展すると警告している。
 ややもすれば曇りがち(曇らされがち)になりやすい私たちの目を明らかにするためには、自らの感性をみがき、論理の力を身につけ、思想を鍛える必要があることを教えてくれる。

斎藤美奈子『ニッポン沈没』筑摩書房(2015)


by yassall | 2015-12-06 20:09 | | Trackback | Comments(0)
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