永田町から有楽町線に乗って家路につこうとすると、乗り合わせた車両の正面の座席で何か一人言をいいながらしきりに涙をぬぐっている老婦人がいた。ときに泣き笑いのようにみえながら、ふっと真顔になったりもするのだが、しばらくするとまた表情がくしゃくしゃとなり、池袋に到着するまでそのままだった。 この詩でいうと、「くすんだ赤旗をひろげて行った/息子」というのが詩人本人(あるいはその同志)であるならば、「老婆」はたった一つの希望であった息子を労働運動だか革命運動に奪われたその「母」ということになる。 そんな解釈が成り立つかどうかは別として、この詩を書いた頃の谷川雁自身は決して「老い」の側にいたのではなかったし、この詩を読んだ頃の私もまた年若い青年時代を生きていたのだった。 母 老婆よ 老婆よ 老婆よ 老婆よ さびれた鉱山の岩間の奥 くらい煙突のあなからさみだれは どぶの蒸気が くすんだ赤旗をひろげて行った 老婆よ 老婆よ 老婆よ 老婆よ (たにかわがん,1923-1995)
by yassall
| 2014-03-10 15:47
| 詩・詩人
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