サブカメラとして愛されたカメラにライカとミノルタの提携によるライツミノルタCL(海外ではLeica CL)がある。ミノルタはライカとの提携を解消した後にもCLEを発表している。 T2のレンズは38mmF2.8だった。38mmはその当時発売されていたコンパクトカメラによく採用されていた焦点距離である。高級機には少々似つかわしくない取り合わせであるのだが、この選択には納得させられるものがある。 一眼レフの標準レンズとされていたのは50mmであったが、実際に使ってみるとやや望遠系である。50mmは廉価版でもF1.8級の大口径レンズであるので、撮り方によっては美しいボケが味わえたりするが、スナップにはやや不向きである。(だから、逆に50mmを使いこなせたら一人前などと言われたりもした。) よく、50mmは対象を凝視したときの画角、35mmは普通にものを見ているときの画角、28mmはあたりを見渡そうとするときの画角といわれたりする。 そこで私などは、F2.0程度の明るいレンズでも廉価で手に入ったこともあり、35mmを長く常用レンズにしていた。だが、やはり35mmは広角系であり、気をつけないと何をねらったのか分からない、漠然とした写真になってしまう。 38mmは画角としては50mmと35mmの中間に位置する。考えようによっては、これ一本というときに、日常のスナップとして絶妙の画角なのである。引いてよし、寄ってよしというところだろうか。(ライツミノルタCLに標準レンズとして装着されたのは40mmF2.8であった。これも似たような発想から選択されたのではないか。まあ、Mマウントのレンズ交換が可能であるから、買えばレンズ一本では済まないだろうが。) さて、遠回りしないといいながら、また前段が長くなったが、TVSの発売は1993年である。T2との最大の違いはレンズがT*Vario-Sonnar28-56mmF3.5-6.5(6群6枚)となったことである。 「バリオ」とは「可変」という意味で、早い話がズームレンズである。ちなみにソニーから発売されているRX100が装着しているレンズもVario-Sonnarである。 TVSに引かれた理由はもちろんズームである。先に書いたように28mmからあれば風景写真にも十分耐え、50mm近辺まであればかなり準望遠的な領域までカバーできる。ズーム比を欲張っていないだけ画質も期待できそうであった。 45歳を直前にしたころで、その1月に学生時代からの親友をなくしたこともあり、これから何を通してものを見ていこうか、などと思いあぐねていた心理状態も影響していたかも知れない。(まあ、カメラを買ってしまう口実なんで無理矢理こじつけていることが多いものだが。) 使い始めてみるとT2がたちまち防湿箱入りになってしまった。最初はやはり「やわらかい」という印象だったが、F8まで絞ると見違えるように鮮明な画像になった。T2だけでなくプライベートな撮影では一眼の出番もなくなっていったのである。 ズームレンズで気になるのはF値の暗さである。TVSが愛機となるにあたってはフィルムの進化が欠かせない。1回目で、写真を始めた当時はASA400でも使い物にならなかったと書いたが、いつの間にかIS0400が常用フィルムになった。フジが第4の感色層を400にも適応したのはもう少し後だったと思うが、ともかくこのころのフィルムの進化には目を見張るものがあった。(実はフィルムだけでなく、プリントもデジタル化へと変化していくのだが、その話はまた別の機会に。) (123×67×41.5mm、375g) (今回はパンフレットの他に発表時のチラシも掲載する。) ※フィルムの進化を話題にしたが、これを背景に使い捨てカメラが大流行した。ネガフィルムはラチュードが高く、多少の露出のバラツキは現像の段階でカバーできてしまうのである。高感度であるから、被写界深度が深い代償に暗いレンズでもシャッター速度がかせげて手ぶれも少ない。だが、何といってもレンズはプラスチックの安物であり、その手軽さから写真に入っていった人たちもやがて物足りなくなっていった。フィルムカメラの衰退の要因の一つはこの使い捨てカメラであると私は思っている。
by yassall
| 2014-02-15 09:28
| カメラ談義
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