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資料「学校図書館と情報教育」

Q11  司書教諭が、情報教育のメディア専門職として位置づけられるという話を聞きましたが……?

A
 文部省の「情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議」の最終報告(1998/8/5)では、「学校図書館が学校の情報化の中枢的機能を担っていく必要が有ることから、今後、司書教諭には、読書指導の充実とあわせ学校における情報教育推進の一翼を担うメディア専門職としての役割を果たしていくことが求められる」とし、具体的な役割として子供たちの主体的な学習を支援するとともに、ティーム・ティーチングを行うこと、教育用ソフトウェアやそれを活用した指導事例等に関する情報収集や提供があげられています。
 情報化は、今私たちの予想をこえて、急速かつ巨大な波として学校現場に押し寄せてこようとしているのかも知れません。
 現代社会に生きるものの素養として、児童・生徒が情報・メディアの活用に関する専門的な知識や技能を身につけていくことは当然求められるし、そうすることによって情報の集中が情報の独占に陥る危険を回避することは、高度情報社会における民主主義の課題であるといってよいでしょう。
 学校図書館の中でも、すでにコンピュータは蔵書管理、資料検索、各種統計などに活用されており、実用化の段階にあります。今後、ネットワーク化がすすめば、単に情報を蓄積・整理する段階から、情報そのものを入手する手段としてきわめて有力な存在となってくることでしょう。その意味で、学校図書館が情報教育の中で重要な働きをすることが期待され、また果たすべきであることは確かです。
 しかしながら、目新しさにまどわされて、学校図書館=情報センターという図式をもって学校図書館の全体と捉えることは誤りであるばかりでなく、危険ですらあるでしょう。
 「中・高で不読者増加(…という)状況を打開するための方策として、情報化(コンピュータ化)はほとんど必要ではなく、かつ重要でもない」として、「学校図書館は、情報や情報化ということを理念上の話とはいえ、無差別に無防備に受け入れすぎているのではないか」(※2)との論も存在します。
 学校図書館があつかうのは、「データ、ファクト、テキスト、イメージなどの断片で、それぞれ個別に使用できる情報information」にとどまるのではなく、「全体として一つのものとして存在する」「発展的であり、蓄積的」な知識knowledge(同)の全体でなければなりません。図書館本来の機能とは、そうした人類の文化財の継承と発展にあるのですし、人間形成期にあたる青少年期にあって必要なのは、個々ばらばらな情報の操作能力である以上に、そうした<知>の全体に触れ、これと格闘することではないでしょうか。

※1 正確には「情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議」
※2 福永義臣「司書教諭の責務と使命」『学校図書館』1997/3
(埼玉県高等学校図書館研究会『司書教諭問題Q&A』1999から)
by yassall | 2012-12-04 15:51 | 図書館 | Comments(0)
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