人気ブログランキング |
<< 村上春樹『1Q84』 教育のつどい2012埼玉県教育... >>

笠井潔『8.15と3.11』と竹田恒泰『これが結論!日本人と原発』

 笠井潔が『8.15と3.11』の中で、「原発は差別の構造を不可避的に生み出す。稼働させ続けるには、放射能被爆の危険にさらされる現場労働者の存在が不可欠だからだ。…諸個人の自由を必然的に制限し剥奪するシステムだからこそ、原発は否定されなければならない」と述べている。
 皇室に連なる家に生まれ、「生粋の保守派」を自他共に認めている竹田恒泰は『これが結論!日本人と原発』で、「原発で働く労働者は路上生活者のなかから確保される場合も多く、弱みに付け込むように、数万円の日当をちらつかせて人数を確保するのである。生活力があれば、わざわざ原発の除染の仕事を好んで引き受ける人はいないだろう。そこには「愛」がない」から反対なのだ、と述べている。
 ときどき、原発に反対か賛成かの問題をイデオロギーの対立に矮小化しようとする論調があるが、立場をまったく異にするこの二人が同様のことを述べているのをみたとき、それが全然的外れであることがわかる。
 ましてや、原発を稼働させないと雇用を失う人がいる、だから必要悪なのでは…などという言説に惑わされてはならないだろう。作業員の人たちを宿泊させるという民宿にしたって本業は漁業や農業なのであり、ひとたび原発事故が起こればそれらの産業は壊滅に瀕することになってしまう。そして、今日の産経ニュースによれば福井・おおい町での原発再稼働は「地元経済の浮揚には直結していない」というのが実際なのだ。
 そして、引き起こされてしまった現実をみるとき、福島原発の廃炉までにいったい何人の現場労働者が動員されるのか(そもそも動員され得るのか、その人数はどう確保されるのか)、おそらくは私が生きているうちは廃炉の完了を見ることはあるまいと思うと本当に胸が痛むのである。
 ごく最近、福島原発を視察した後、「人類が生み出した技術を放棄するのは愚かなこと」と言い放った御仁がいるが、私にいわせれば現在の原発なんて、原子力を使ってお湯を沸かしているだけなのだ(それくらいしか出来ていないということ)。これに比べれば太陽光を電気に変える技術の方が特段に未来的である。これも竹田恒泰と柄谷行人が同じことを言っているのに驚かされたのだが、当面はガスによる火力発電を中心として(熱効率のよい発電機が開発されているとのこと)、再生エネルギーの開発と普及をすすめるのが未来に通じる道であると思う。(アメリカがすすめているシェールガスは水質汚染の危険性が大きいらしいが。)

笠井潔『8.15と3.11』NHK出版新書(2012.9.10)
竹田恒泰『これが結論!日本人と原発』小学館新書(2012.3.14)
by yassall | 2012-11-12 19:12 | | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://sakurago.exblog.jp/tb/18748518
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
<< 村上春樹『1Q84』 教育のつどい2012埼玉県教育... >>