これ一枚はチラシにも採られた「フローラ」だった。予想通りだなと思ったが、この一枚を見ることが出来ただけでよかったし、展覧会はそうしたものだ。 感じたことが二つ。フローラはローマ神話における花と春と豊穣の女神である。この絵にはヴェネツィアの高級娼婦をモデルにしているという説があるが、それはフローラを祀るフロラリア祭が神官とともに遊女も参加する奔放な祭りあったことから来ているようである。神聖娼婦は古代から世界各国に存在し、日本においても神につかえる巫女が中世においては遊女でもあったという歴史がある。聖と俗、貴と賎はどこかで繋がっているのかも知れない。 ティツィアーノの別の代表作である「ウルビーノのヴィーナス」とどことなく面影が似ているので同一のモデルを使ったのかとも思ったが、制作年代が1515年と1538年と隔たっているので異なるのだろう。特定のモデルを使ったというより、画家の中で理想化された女性像だったというのが確かであるようだ。 感じたことのもう一つというのは、顎の線や左手にみられるふくよかさである。豊穣の神にふさわしいといってしまえばそれまでだが、下ってはルノワールにも影響を与えたというのはうなづける。してみるとルノワールの絵画にもどこか祝祭的な要素があるのかも知れない。 「受胎告知」は国立新美術館でみたときやはりこれ一枚と思った。今回、「ウルビーノのヴィーナス」も来ているのかと期待していたし、「ウルビーノ」の横たわる裸婦像に影響を与えたというジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」も並べて展示されていたりしたら、いっそう充実した美術展になっただろうと考えてしまうが、そうもいかないのだろう。
by yassall
| 2017-02-03 16:06
| 日誌
|
Comments(1)
Commented
by
desire_san at 2017-03-24 21:55
こんにちは、
私も『ティツィアーノとヴェネツィア派展』を見てきましたので、ブログを興味深く読ませていただきました。ティツィアーノの『フローラ』のつややかな肌の質感の表現のすばらしさから、『ダナエ』の美しい色彩感覚とは動的な表現と画風が変化しているのを興味深く感じました。眼に涙を浮かべ天を仰ぐ『マグダラのマリア』は大変美しく、マリアの敬虔さと美しい女性の適度の官能的側面がよく調和に魅力を感じました。 私もこの美術展を見て、代表的な作品の魅力とヴェネツィア派絵画とフィレンツェやローマのイタリアルネサンスとの違いを考察してみました。読んでいただけると嬉しいです。内容に対してご意見・ご感想などコメントをいただけると感謝いたします。
0
|
最新の記事
カテゴリ
タグ
演劇(106)
花(93) 美術館(77) 高校演劇(76) 旅行(60) 読書(40) カメラ談義(28) 学校図書館(26) 日韓問題(26) 国語国文覚え書き(17) 日本浪曼派(17) 庭園(15) 朝鮮戦争(10) COVID-19(8) 映画(8) 酒・食物(7) 脱原発(6) 太陽光発電(5) 懐かしの怪奇スター(5) 九条(4) 記事ランキング
最新のコメント
お気に入りブログ
ぶらぶらデジカメ写真 b... Black Face S... * thank you * 釜石写真館(旧 盛岡写真館) 鳥居 18→81 c-en Soul Eyes 久米谷dayory 大きな楡のテーブルⅢ 新緑もみじBE53 外部リンク
以前の記事
2024年 12月 2023年 05月 2023年 03月 2022年 12月 2022年 08月 2022年 06月 2022年 04月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2011年 12月 2011年 03月 ブログジャンル
検索
|
ファン申請 |
||