自民党は憲法96条を「改正」し、憲法改正を発議する要件を2/3の国会議員の賛成から1/2に緩和することを、参院選の公約とする方針を固めたとのことだ。
だが、HPでみればすぐ知ることが出来るように、自民党は「憲法改正草案」という次のプログラムを持っている。 その内容に対しては、「国防軍」は「国際社会の平和と安全を確保」するために活動することができる(米軍と共同作戦をとることを可能にする)とか、国民の自由と権利に対して「公益と公の秩序」の名の下に制限を加えようとしているなど、すでに多くの問題点が指摘されている。 ※ 自民党の「改憲草案」を読むと、たぶん自民党内部に新自由主義と新保守主義の二つの流派があり、その矛盾がそのまま現れているように思われる箇所がある。 次は24条として新設しようとしている条文である。これなどは新保守主義(伝統主義)の具体的なあらわれだろう。 「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。」 これをとらえて憲法学者の小林節氏などは「よけいなおせっかいだ」と切り捨てている。「法は内心に踏み込むな!」というわけである。 家族は時代によってかたちを大きく変えている。農業が中心だった時代は大家族が、資本主義が発展し、都市化がすすむと核家族が支配的な家族のかたちとなった。グローバル化がすすんだ今日では国境を挟んで家族が別居しているということも珍しくはなくなっている。 家族を「社会の自然かつ基礎的な単位」としたとき、いったいどのような形態を想定しているのだろうか? まさか事情があって別居していたり、離婚のやむなきにいたった人々を憲法違反だといったりはしないだろうが。 ※ もう一つ。核家族化がすすんだとき、「家族の孤立」が育児ノイローゼの原因とされたりしたことがあった。現代という時代は、家族内部の「助け合い」を強調するばかりではなく、その家族を支援したり、家族同士が助け合ったりするしくみが求められているのではないだろうか? ※ 自民党「改憲草案」は国民の「義務」を強調したものになっていることが指摘されている。(「自由及び権利には責任及び義務が伴う」草案12条など。) そこで草案24条にもどると、やはり「家族は、互いに助け合わなければならない」が気になってしかたがない。 現在でも、民法に「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」(877条)「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」(752条)の定めがあるのに、なぜ憲法に書き込む必要があるのか? 別居している親が生活保護を受けていることで社会的非難をあびたタレントがいたが、一方でその切り下げが問題になっている。極端な例としては、生活保護が認可されず、餓死にいたったという悲劇が全国で続出している。 「家族愛」の美名の下に、生活保護や社会保険などの公的扶養が切り捨てられることであってはならないと思うのである。 本心から家族を「尊重」しようというなら、子育て支援、雇用確保、住環境整備などに国家が責任を負おうとする必要があるのではないだろうか? (憲法記念日に) 《追記》 昨日は憲法記念日ということで少々重たい文章を書いてしまったが、今朝の東京新聞を読んでいたら国家公安委員長の古屋圭司氏(自民)が「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位」と書くだけで結婚促進政策が実施でき少子化対策になる、などと発言している。こういうのを臆面もなくというのではないだろうか? (私は新保守主義によるロマン的伝統主義くらいに感じ取っていたのに。) 2013.5.4
by yassall
| 2013-05-03 16:23
| 雑感
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Comments(1)
Commented
by
torikera
at 2013-05-05 23:48
x
「家族は~基礎的単位」と書くと結婚促進政策!!とは
片腹痛い 何という脳天気な方だろうか 若者が社会で活躍しなおかつ自立し子育てできる収入を保障するための政策にとりくみなさい!
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